10 日本文の内容を補足説明する
例題 2:初級練習問題 61
「学校の食事の時間はとても楽しみです。私は何からも縛られない自由な食事をしたいので、学校での食事は給食ではなく個人が自由に食材や量を選べる弁当が最も良いと思います。」
この練習問題は口語体で書かれていますね。口語体の文章は、英文で表現しようとすると、文語体(新聞記事の要約などの他の練習問題のように硬い文章)の文章よりも難しいです。日常生活では文語体で文を書くより、口語体で会話をするほうが多いのに不思議ですね。口語体は使い慣れた文体なので、いろいろな常套句や省略が入っているから、英文で内容を表現しようとすると難しくなります。勿論、英語にも口語体があります。しかし、日本語と同様に常套句や省略が多く使われているので、これらの常套句を覚えていないと口語体で表現できません。これらの常套句は状況に応じて無数にあるので覚えるのが大変です。それよりは文語体の英文で(あまり常套句は使わずに一般的な表現を使って)書いたほうが英作文はやさしくなります。上の練習問題も文語体で表現してみましょう。
「学校の食事の時間はとても楽しみです。」
「学校の食事の時間」が日本語の主語のようにみえますが、英文でこれを主語に選ぶと表現が難しくなります。「わたしは学校の昼食の時間が大好きだ。」と「わたし」を主語にしましょう。I love
lunchtime at school. と表現できます。loveはI love you.のように人間だけでなく食べ物や、趣味などにも「大好きです」という意味で使えます。「学校で」はat
schoolとなりat the
schoolのように冠詞はつきません。これは「勉強をしに行く学校」と言う意味で、後者のように冠詞が付くと「学校の建物」の意味になります。
「私は何からも縛られない自由な食事をしたいので、学校での食事は給食ではなく個人が自由に食材や量を選べる弁当が最も良いと思います。」
「私は何からも縛られない自由な食事をしたい。」というように分割してみましょう。「何からも縛られない自由な」が常套句ですね。「何からも縛られない自由な時間、生活」などのように使います。ではこの常套句はここで具体的にはどんな意味を持っているのでしょうか?一般的な表現ではどう言ったらよいでしょうか?学校の昼食のことですから、「私は(学校の)朝食に私の好きなものを食べたい。」でどうでしょうか。I want
to eat A at school lunch.でAの所に「私の好きな食べ物」を入れればよいですね。my
favorite meal, my favorite foodなどと表現できますが、もっと一般的なものを指すのにwhat I likeという便利な言い方があります。I want to eat what
I like at school lunch.となります。
「学校での食事は給食ではなく個人が自由に食材や量を選べる弁当が最も良いと思います。」
この文の一番大切な情報は何でしょうか?「給食より弁当が良い」ですね。I like A better
than B.またはI prefer
A to B.という文型で表現できます。問題は「給食」と「弁当」です。和英辞書で引いて一番近いものは「給食する」provide
lunch, supply lunch、「弁当を持ってくる」bring
lunch from homeでしょう。「給食」はこの状況では「学校から支給された昼食を食べること」という意味の省略表現です。同様に「弁当」は「家から昼食を持ってくること」になります。to eat
lunch provided by school,またはeating
lunch provided by schoolとto bring
lunch from homeまたはbringing
lunch from homeと表現できます。I prefer
A to B.の文型を使ってみましょう。
I prefer bringing
lunch from home to eating lunch provided by school.となります。
「個人が自由に食材や量を選べる弁当」がまだ残っていますね。「なぜなら、私は私の弁当に食材の種類と量を自由に選べるからです。」と説明をつけましょう。
Because I can
freely choose the kind and amount of food for my lunch.
では英文の小文を並べて見ましょう。
I love lunchtime at
school. I want to eat what I like at school lunch. I prefer bringing lunch from
home to eating lunch provided by school. Because I can freely choose the kind
and amount of food for my lunch.
日本文の内容は伝わりますが、小文と小文のつながりがギクシャクしていますね。つぎのようにしてスムースにしましょう。
I love lunchtime at
school and I want to eat what I like at school lunch. So, I prefer bringing
lunch from home to eating lunch provided by school. Because I can freely choose
the kind and amount of food for my lunch.
「客を車いす利用者や歩行の困難な人に限った患者限定タクシーが、北海道内でじわりと増えてきた。規制緩和で事業に参入しやすくなった結果で、タクシー会社以外の異業種も新規開業の構えを見せている。」
「規制緩和で事業に参入しやすくなった結果で、タクシー会社以外の異業種も新規開業の構えを見せている。」
「タクシー会社以外の異業種も新規開業の構えを見せている。」では「異業種」がわたしの持っている辞書には載っていません。内容から「タクシーサービス以外の会社」と言い換えます。「構えをみせる」は「構える」を引くと、come to the ready, brace for ~, get ready
for ~などがあります。「構えを見せる」の「見せる」は構えるという動作を強調しているので、ここでは簡単なget ready forを使い、強調のために現在進行形を使いましょう。
「札幌の働く女性の約六割は仕事にやりがいを感じているが、管理職を目指しているのは一割未満。北海道新聞が行った「働く女性のライフスタイル調査」で、こんな結果が出た。働く理由は「生計維持」など収入目的が上位を占め、職場はお金を稼ぐ場所と割り切って、無理をせず、ほどほどの生活を楽しもうとする姿がうかがえる。」
ごく普通の日本文ですが、新聞の事件の記事と較べると「くだけた文体」の感じがしますね。「仕事にやりがいを感じている」、「お金を稼ぐ場所と割り切る」、「無理をしない」、「程ほどの生活を楽しむ」、「〜の姿勢がうかがえる」などの日本語の常套句が多く使われているためです。日本語の常套句は日本人の文化的背景に深く関係していて、常套句を使う人は読者も同様な文化的背景を共有していること想定しています。この共通の文化的背景を想定しているので、常套句を文章や会話に使うと親しい感じが生まれます。英語の常套句も同様な性格をもっています。
常套句は文化的背景の強い言葉ですから、日本語の常套句にうまく対応する英語の常套句はなかなかありません。またよほど英語の常套句とその文化的背景を知っていなければ、日本語の常套句を英語の常套句で表現するのは難しいです。わたしは日本語の常套句を一般的な日本語表現に言い換えてから、一般的な英語で表現する、という方法を使っています。
さて、前置きが長くなりましたが、まずは英語の基本文型が使えるような小文分割から始めましょう。
「札幌の働く女性の約六割は仕事にやりがいを感じているが、管理職を目指しているのは一割未満。北海道新聞が行った「働く女性のライフスタイル調査」で、こんな結果が出た。」
「札幌の働く女性の約六割は仕事にやりがいを感じている。」では「やりがいを感じる」を英語で表現できればよいですね。和英辞書で「やりがい、やりがいを感じる」を引くと次のような表現が載っています。どれも常套句ではなく、一般的な英文表現になっています。
「やりがいがある」be worthwhile, give one a sense of satisfaction (研究社 新和英中辞典);「やりがいのある〜」worthwhile
~,「やりがいがある」prove
worthwhile,「困難だがやりがいのある〜」challenging
~,「やりがいのあることをする」do
something worthwhile(英辞郎)
辞書に載っている表現を使ってみましょう。
About sixty percent
of working women in Sapporo think that their job gives them a sense of satisfaction.
About sixty percent
of working women in Sapporo think that they have a worthwhile job.
About sixty percent
of working women in Sapporo think that they are doing something worthwhile at
their work place.
うえの三つのなかで一番目が日本文の表現に一番感じが近いようですね。このままでもよいですが、次のようにすると簡単になります。
About sixty percent
of working women in Sapporo find their work satisfying.
「しかし、これらの女性の一割以下の人が管理職になることを目指している。」
日本文で「管理職を目指している人は一割以下である」となっています。直訳するとThose who aspire to
become a manager are less than ten percent of them. となりますが、主語を「これらの女性の一割以下」にしたほうが内容がわかりやすくなります。
But less than ten
percent of them aspire to become a manager.
「これらは北海道新聞がおこなった働く女性のライフスタイル調査の結果の一部である。」
These are some
results from a lifestyle survey of working women by the Hokkaido Newspaper.
「働く理由は生計維持など収入目的が上位を占め、職場はお金を稼ぐ場所と割り切って、無理をせず、ほどほどの生活を楽しもうとする姿がうかがえる。」
英文の文章の構成としては「これらの結果ら、われわれは次のようなことを見る(わかる)」From these results,
we can see that ~.としてthat節に内容を入れればよいですね。内容を三つの小文に分割して言い換えてみましょう。
「大部分の働く女性は職場をライフスタイルを支持するためにお金をもうける場所とみなしている。」と日本文の内容を簡単に言い換えてみましょう。日本文の内容を英文で表現するときには、日本文の大切な情報が英文でも表現してあるかが重要で、日本文の構成を英文で再構成する必要はありません。
Most working women
regard their working place as just a place to earn money to support their
lifestyle.
「(仕事で)無理をしない」は内容を補足して「働く女性は仕事に全力を注ぎたいとはおもわない。」と言い換えてみましょう。
Working women do
not feel like putting all their energy into their work.
「ほどほどの生活をする」も内容を補足して「働く女性はむしろ適度の収入で居心地のよいライフスタイルを楽しみたいと思っている。」と言い換えるとわかりやすくなります。
Working women
rather want to enjoy their snug lifestyle with a moderate income.
小文を並べてみましょう。
About sixty percent
of working women in Sapporo find their work satisfying. But less than ten
percent of them aspire to become a manager. These are some results from a
lifestyle survey of working women by the Hokkaido Newspaper. Most working women
regard their working place as just a place to earn money to support their
lifestyle. Working women do not feel like putting all their energy into their
work. Working women rather want to enjoy their snug lifestyle with a moderate
income.
文章全体の構成は上のままでよいですね。These are some results ~. が文章の真ん中にありますが、この文の前の文が調査の要約、後ろが詳しい説明になっているので、この位置でよいでしょう。文と文のつながりをよくすると、つぎのようになります。
About sixty percent
of working women in Sapporo find their work satisfying yet less than ten
percent of them aspire to become a manager. These are some results from a
lifestyle survey of working women by the Hokkaido Newspaper. Most working women
regard their working place as just a place to earn money to support their
lifestyle and do not feel like putting all their energy into their work. They
rather want to enjoy their snug lifestyle with a moderate income.
例題 5:初級練習問題 105
「10月10日午後8時40分ごろ、東京都武蔵野市のJR中央線の踏切で、高架工事で幅が広がったため乗用車が渡りきれず電車が緊急停止した。」
日本文はごく普通のニュース記事ですが、英文で表現しようとすると何を主語にしたら良いか戸惑いますね。「10月10日午後8時40分ごろ、東京都武蔵野市のJR中央線の踏切で、」は日時と場所なので英文の中では副詞句で表現できます。すると、残りの「高架工事で幅が広がったため乗用車が渡りきれず電車が緊急停止した。」の主語+動詞関係を調べてみましょう。
1. 踏み切りの幅が(高架工事の間)長くなった。
2. 乗用車が踏み切りを(時間内に)渡れなかった。
3. 踏切内に)乗用車がいた。
4. 電車が緊急停車した。
先ずは上の四つの小文に分割してみます。1は「長くなった」と日本語ではひとりでにそうなったような表現ですが、英語では「長くさせられた」と受動態になりますね。高架工事を主語にして、「高架工事が踏み切りの幅を(一時的に)長くした。」という小文にすることもできます。
「乗用車が渡りきれずに」は「乗用車が(時間内に)踏切を渡れなかった。」ということを省略して表現したものですね。このように小文に分割するときには、省略されている内容を補足して小文を作ると、英文で表現することがやさしくなります。
3は日本文では読者にわかるものとして省略されていますが、小文に分割するときには入れる必要があります。
4はこの日本文のキーセンテンスになりますね。
では小文を英文で表現しましょう。
1. 「高架」を英辞郎で引くと、「高架高速道路」an elevated highway、「高架鉄道駅」an elevated rail
stationなどの用例が見つかります。この日本文では「高架鉄道線路」の意味ですから、an
elevated rail trackにしましょう。受動態の小文を使って、The
railway crossing was made longer during the construction of an elevated rail
track.と英文で表現できます。
2. A
passenger car could not cross the railway crossing in time. (主語+動詞+目的語)で表現できます。
3. There
was a passenger car in the railway crossing. これがこのように表現になります。There is/are A.の文型は五つの基本文型には入っていませんが、よく使う文型ですね。
4. 「電車が緊急停止した。」は「電車が急に止まった。」The
train stopped suddenly.でもよいですが、電車がなにかの理由で急に止まってしまった、というように取れるので、The
train made a sudden stop.として「電車(の運転手)が緊急停車をした、とします。
では四つの英語の小文を並べて、小文間の連絡、省略を考えましょう。このときに日時、場所の情報も入れます。
The railway
crossing was made longer during the construction of an elevated rail track.
A passenger car
could not cross the railway crossing in time.
There was a passenger
car in the railway crossing.
At about 8:40 am on
October 10, a train made a sudden stop at a level railway crossing of JR’s Chuo
Line in Musashino City, Tokyo.
この順序のままでは因果関係がはっきりしませんね。論理的に並べ替えてみましょう。
There was a
passenger car in the railway crossing.
At about 8:40 am on
October 10, a train made a sudden stop at a level railway crossing of JR’s Chuo
Line in Musashino City, Tokyo.
The railway
crossing was made longer during the construction of an elevated rail track.
A passenger car
could not cross the railway crossing in time.
次に小文間の連絡方法を考えましょう。
At about 8:40 am on
October 10, a train made a sudden stop at a level1 railway crossing
of JR’s Chuo Line in Musashino City, Tokyo because2 there was a
passenger car in the crossing3. The passenger car could not cross
the crossing in time because4 the crossing was made longer during
the construction of an elevated rail track.
1. 踏切には平地で車と電車の通るところが同じなものa level
railway crossingと車の通るところが高架になっているものan
elevated railway crossingがあるのでここでは最初のほうにしました。単にa
railway crossingでも文章の内容からわかります。
2. 理由の従属節にして内容の関連をはっきりします。
3. すでにa level railway crossingと文の中に出ているので、2回目からはthe crossingと省略できます。
4. ここも理由の従属節で連結できます。
この例題のように、日本文の内容を英文で表現するときには、日本文では読者にわかるものとして省略されている内容を補足する必要があります。次のような順序になります。
日本文
内容を補足して小文に分割
英語の小文で表現
英語の小文を論理的に連結
重複した表現を省略。
補足+省略はいわば「内容を足してから引く」ことになりますが、日本文と英文では省略するものが異なるので、このような順序になります。日本文には省略されているのに英文では補足しないといけないものは何か、日本文では書いてあるのに英文では省略するものは何か、を英作文の経験を通して学んでいくことが、日本語思考と英語思考の勉強になります。